刘溢 (劉溢、Lui Liu)
刘溢 (劉溢、Lui Liu、ルイ・リウ)
漢字表記とアルファベット表記は姓と名の表記が逆になっている。
1957年3月に華北 (North China) で生まれ、1991年にカナダへ移住している。
画家。
ポストしたふたつの作品は共に2006年に制作されたもので、タイトルを 『2008-北京 (2008-Beijing)』、『搓麻将的女人』 という。2年くらい前にネットの一部で話題になった絵画なので憶えている方もいらっしゃるだろう。
あられもない姿で麻雀に打ち興じる四人の少女 (或いは女性) たちとそれを眺めるひとりの少女。確かに少々エロくはあるのだが、それだけではネット上で話題になる程というものでもない。何がきっかけでこれらの作品が注目されたのだろうか、そう不思議に思われる人もいるだろう。
真偽のほどは定かではないが、こういった話である。
刘溢 (劉溢、Lui Liu) は、寓意を込めてこの二作を描いたのだ
つまり、この五人の少女がそれぞれ国の象徴として描かれ、この描かれた状況が北京オリンピックを迎える2008年の政治情勢を予言した、非常に政治的な意図を持って描かれた絵画らしいということ。
登場する国は、アメリカ、ロシア、中国、日本、そして台湾。
とまあ、こういった内容の情報がネット上に流れてきた。
あやふやな記憶を元にもう少し詳しく書いてみよう (自信がなくなってきたら検索して確かめます)。
まずは 『2008-北京』 から。
腕を頭の後ろで組み、卓から顔をそらした、なにやら余裕ありげな少女がアメリカを表している。勝利を確信しているかのようなこの少女は、別の少女に顔を向けている。だらしなく寝そべって勝負を投げ出しているかのように見える少女がロシア。何かそんな感じだよね、あの国ってって感じだったんだけど、近頃は帝国の復活めいた匂いがプンプンするので、こんなに怠け者じゃない感じだ。こちらに背を向けた、背中に刺青を入れた少女が中国。麻雀牌を2枚ぎって、隠し持っている。こちらもさもありなんといった感じ。なんとなく困った表情を浮かべて俯いている少女が日本。状況が変化するでもないのに牌とにらめっこをしているところが日本らしい。そして、ひとり厳しい顔をして立っている少女が台湾。右手で熟れた果物を入れた器を持ち、みんなから見えない左手はナイフを硬く握り締めている。その視線の向かう先は?
こういったところだろうか。
これが 『搓麻将的女人』 になると、その状況が一部ではあるが変化していることに気が付くだろう。
アメリカとロシアを表しているらしい少女たちには特に変化は見られないのだが、しかし、中国と日本を表しているらしい少女たちにはそれぞれ目に見える変化が起きている。
まず中国を表しているらしい少女だが、一番分かりやすいのは、ぎっていた2枚の牌が1枚に減っているということ。状況の変化で外交カードを一枚切ったといったところだろうか。卓上の牌にも変化が起きていて、 『2008-北京』 では描かれていなかった手牌の萬子が一枚、こちらからも見えるように描かれている。もうひとつ、画像では分かり辛いのだが、背中の刺青の図柄が以前とは別のものに変わっている。ズームして見比べてみたが、何が何へ変化したのかイマイチ掴めなかったので、どういった変化を表しているのかは分からない。
そして一番目立った変化をしているのが日本を表しているらしい少女。『2008-北京』では、俯き、難しげな表情をしていた少女が、まるで別人に変化している。こちらに背を向けた中国を表しているらしい少女に向かって、体を乗り出して下品な笑顔を浮かべている。まるで挑発をしているかのようだ。
そして、変化しているのかどうか判断しかねたのが、台湾を表しているらしい少女。一見変化しているようには見えないのだが、目つきがいっそう厳しくなり、その視線の向かう先が変化しているように見えなくもない。
とまあ、こういったところになる。
北京オリンピックを挟んでこういった状況の変化が訪れるかもしれないということをこの二作の変化で表したかったのだろうか。では実際に2008年になり、どういった事が起きたのかというと、日本と中国の間では毒餃子事件があったし、日本と台湾の間には台湾の政権交代でちょっとしたゴタゴタがあり、中国国内においては天候不順や四川省の地震という災害の問題、3月に起きたチベット動乱などがあったが、オリンピックが終った今の状況といえば、オリンピック開催期間中にドンパチ始めちゃったロシアとグルジアの問題で国際社会の目はみんなそちらを向いてしまった。東アジアでは、政治情勢の変化よりも、現時点で見える形で問題が現れそうなのは、この絵には登場していない国の経済の破綻の方かもしれず、なんにしてもポストしたこの二点の様な状況には未だに至っていない。
とはいえ、状況は突発的に変化することも十分ありえるので、将来、こういった状況がこの絵に登場した国家間に起こりうることなのかもしれないが。
あっ、壁面に描かれた肖像画に言及していないことに、ポストする今になって思い出してしまった。この件については、検索するとそのことに言及している文章が多分あると思うので、気になる人は、ググることをお薦めしておく。
Lui Liu / 刘溢
刘溢- 雅昌艺术博客
"Beijing-2008 ou Femmes nues au Mah jong" : Analyse - La Chine
Glass Garage Fine Art Gallery
長かった特集もこれで終了しました。
ゴールは最初っからこの刘溢 (劉溢、Lui Liu) の作品だって決めてありました。が、ゴールだけ決めてその他はポストしていけば形が見えてくるだろうといういい加減なスタートを切ってしまったのです。今思えば、これが失敗の元でした。三日目のポストの後に、あっ、アーティストのチョイスとペース配分間違ってる、と気が付きました。どういうことかというと、つまり、ここまで幅広くポストする予定ではなかった。十日前後の期間でひとつの流れが完結する様な特集になればいいかなと考えていたのです。しかし、どのアーティストの作品を今回ポストするのかということを明確に決めていなかったことで、滑り出しの流れがゆったりとしたリズムになってしまいました。これはどうも十日前後じゃ、上手いカタチが出来上がらないなと、長期戦になる覚悟を決めたんですけど、さすがにここまで引っ張るとは思っていなかったので、ちょっと疲れました。
このひと月お付き合い頂いた方がどれくらいいらっしゃるのかは分かりませんが、ダラダラとした特集にお付き合い頂きありがとうございました。また、ひと月もやった特集で、しかも北京オリンピックを記念してなんてことを言っておきながら、オリンピックそれ自体に対する言及もまったくないってことに気付いてしまった、勘のよい方がいらっしゃるかもしれません。お察しの通り、ワタクシ、○ておりません。話題になった開会式も、北島の金メダルも、な~んにも○てないんです。
そういうワケで、今年も夏の間に水着特集をやり損なってしまいました。