Wednesday, February 27, 2008

Brigid Marlin、そして J.G. Ballard と Paul Delvaux



Brigid Marlin (ブリジット・マーリン)
1936年1月16日ワシントン州Washington, D.Cに生まれ。
現在はイングランド在住。
fantasy and portrait artist。

J.G. Ballard (J.G.バラード) が Paul Delvaux (ポール・デルヴォー) が好きで、WWⅡで失われてしまった Paul Delvaux の作品をあるアメリカの女性アーティストに頼んで複製してもらったというのを以前どこかで読んだ。
その女性アーティストが誰であるのか興味はあったのだが、取り立てて調べることもしなかったのだか、それが1年近く前、あるきっかけでその女性アーティストが誰であったのかを知ることができた。

まあ、それを知ったきっかけってのは、ぶっちゃけると 2ch なんすけど。
SF 板の J.G. Ballard スレに2007/03/13(火) 03:50:54付けで、

ガーディアン誌の Writer's rooms というコーナーにバラードが登場

という文が URL を添えて書き込みされましてね。
ありがたいことに次のレスにその内容の翻訳まで。
検索した結果、このことについて触れている人が特にいない様だし、しばらくすれば該当のスレもDATの海へと沈んでいくだろうから、それじゃあまりに勿体無いなと思ったりもするので、まんま引用させて頂きます。

2007/03/13(火) 03:50:54

ガーディアン誌の Writer's rooms というコーナーにバラードが登場


私の部屋は巨大な絵に占められている。ベルギーのシュールレアリスト、ポール・デルヴォーによる The Violation の複製画だ。原画は1940年に空襲で破壊され、私は知り合いの画家 Brigid Marlin に写真から複製を作ってもらった。この絵とその神秘的で美しい女性から目が離せない。私は絵の中に入ってしまい、毎朝新しくなって戻ってくるのではないかと時々思うことがある。男の夢だ。

四人の孫の写真がある(一枚は私の女友達のクレアの写真とともに見切れている)。
絵葉書はダリの「記憶の固執」。20世紀の最高傑作だ。その隣は私の娘の描いた絵で、21世紀の最高傑作だ。デスクの上には最近階段棚で見つけた古い手動タイプライター。手動タイプで打った手紙をくれたウィル・セルフに刺激されたのだ。
今のところこの古い機械を眺めているだけでさわる勇気が出ないのだが、さて、どうなるか。私の小説は初稿はすべて手書きで、それを古い電動タイプライターで打つ。コンピューターを手に入れることには抵抗している。PC全体を信用していないからだ。コンピューターを使って偉大な本が書かれたことはまだないと思う。

このデスクで47年間仕事をしてきた。小説はすべてこれで書いたし、あらゆる種類の古い書類が巨大な珊瑚礁のように堆積している。椅子は私の母が中国から持ち帰った古いダイニング・チェアで、おそらく私が子供の頃腰掛けていたものだ。
古い付き合いということになる。パオロッツィのスクリーン・プリントがドアに立てかけられて夏の間は猫用のバリアになっている。隣家の猫たちはすこぶる人なつこく、夏になるとデスク上に飛び上がって書類をめちゃくちゃにかき回してしまう。最強の批評家たちだ。

一日に三・四時間、昼前と昼過ぎに仕事をする。それから散歩に出かけ、ジントニックに間に合うように帰って来る。

以上で引用終わり。
オイラも英文の内容を訳して載っける場合は、こういったレベルで載っけないと恥ずかしいなと思うけど、無い袖は振れりゃしませんので、仕方が無いです、これからも恥かきます。
ちなみにポストした画像の3枚目がこの引用文の元記事に添えてあった J.G. Ballard の書斎と Brigid Marlin が複製した Paul Delvaux の "The Violation" の写真。

んじゃ、下の画像は何なのかというと、上記の記事の1年半くらい前に Seven, The Sunday Telegraph Magazine, November 13, 2005 に掲載された記事に添えられていたもの。


内容は、surrealist たちを敬愛してやまない J.G. Ballard は、Paul Delvaux の作品を所有することを夢みていた。
しかし、1960年代頃にもなると Paul Delvaux の作品は天文学的な数字で取引されており、J.G. Ballard には作品を購入するほどの余裕も無い。
そこで J.G. Ballard は、WWⅡ時にロンドン大空襲で消失してしまい、b/w の写真でしかその存在を確認することができなくなってしまった Paul Delvaux の "The Mirror" という作品の複製を Brigid Marlin に依頼して再現してもらうことにした。
それが4枚目の画像で J.G. Ballard の後ろに懸かっている作品。
また、J.G. Ballard は、ノーベル賞を受賞した暁には Paul Delvaux の作品を買おうと常々考えていたそうなのだが、実際に手にした実物が手に入れたいと願っていた頃に思い描いたものほどではなかったらと考えると恐ろしく なった様で、エドゥアルド・パオロッツィ (Eduardo Paolozzi) を通じて多少の面識があったフランシス・ベーコン (Francis Bacon) の作品を手に入れることにその願いを変更している、といったもの。
なんておちゃめな J.G. Ballard!!

そういえば、出るぞという噂を聞いてからかなり経ったが、東京創元社柳下毅一郎がようやく重い腰をあげた様で、来月にはいよいよ『クラッシュ "Crash"』が文庫化される。
かなり改訳されている様なので買い直さないとね。

それはさておき、Brigid Marlin のサイトのトップページには J.G. Ballard が Brigid Marlin について書いた文章があるので、興味のある方はご覧あれ。

さて、ポストした Brigid Marlin のふたつの作品なのだが、1枚目は "The Rod" というタイトルの作品で、イラクのクウェートに侵攻以前に描かれたもの。
芸術家は時々大きな出来事を予見してしまうかのような作品を作り出してしまうことがあるが、Brigid Marlin はこの作品がそれに当たると考えている。
"The Rod" は、世界の悲惨な状況にある中で我々がしがみつくことができる霊的な結合の象徴を描いたもので、砂漠は水のない場所としての世界を表し、そしてそれは真実の象徴である、ということの様だ。
2枚目の作品のタイトルは "Monday"。
Brigid Marlin は作品にそれぞれコメントを付けていて、この作品にももちろんそれがある。
曜日にも黄道十二宮ようにそういった意味がある。
精神的な成長のステージは、錬金術の操作によって象徴的に表現される云々といった内容なのだが、イマイチ理解できないので省略。
この作品は、夜、遠くに見える海、廃墟と化した神殿、青白く無表情な裸婦(実際にはシースルーの衣装を身に纏っている)が、どこかしら Paul Delvaux の作品を感じさせもする。
Paul Delvaux の描く女たちをよりリアルに近づけて描いているといってもいいのかもしれないが、Brigid Marlin の描いたこの女は、Paul Delvaux の描く女たちより、その存在をより遠くに感じるのは何故なのだろう。

Oil and Tempera Paintings by Artist Brigid Marlin in the Mische Technique
Wikipedia - Brigid Marlin
Brigid Marlin of The Society for Art of Imagination
Keith Wigdor presents Surrealism Now!
Writers' rooms: JG Ballard | Special Reports | guardian.co.uk Books
Ballard on Delvaux and Brigid Marlin
Wikipedia - J・G・バラード
Wikipedia - Paul Delvaux
● J・G・バラード ● より

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