Wednesday, October 29, 2008

榎 俊幸 (Toshiyuki Enoki)



ℂ榎 俊幸


榎俊幸 (Toshiyuki Enoki)
1961年東京生まれの画家。

グスターヴ・ホルスト (Gustav Holst) の作曲した組曲 『惑星 "The Planets"』 の天体名に着想を得て描かれた神話の神々や西洋の童話をモチーフにした作品などもあるのだが、榎俊幸の手にかかるとその世界が脱西洋化され、東洋的な幽玄さを持つ魔術的な幻想世界となって表れる。
例えば、榎俊幸が何度となく描いているクモザル。ボクは榎俊幸が描いたそのクモザルが大好きなのだが、長い尻尾が特徴的な愛嬌のあるこの猿は、本来中南米の熱帯雨林、密林地帯で群れをなして棲息している。しかし、これが榎俊幸の手にかかると、まるで中国の山奥でひっそりと生きている猿のように見えてくるから面白い。
DESIGN GARDEN 事務局ブログ アートなひとになりたい。というブログのインタビュの中で、クモザルについて質問され、

「ぶらさがってるのとか、しゃがんでいるのとか色々とあるけど、クモザルの「クモ」ってところにあわせると…」
「クモが糸で降りて来る形にあわせると「クモザル」って感じがするでしょ。虫のクモのあのポーズをとらせているんだよ。本来こんなポーズはしないんだけど…」
「尻尾だけでぶらさがる事はあるけども足は上に向かないからね。足も全部さがるし、クモザルは割と大型だから手と尻尾でね、二カ所で必ずぶらさがってるんだよね。」

と、クモザルの生態を理解したうえで、名前の由来になった 「クモ」 の部分のイメージを拡大解釈してデフォルメしていることを告白している。ちなみにこのクモザルの英名は "Spider Monkey (スパイダーモンキー)" である。

他にはカンガルーなども榎俊幸の作品の中では東洋の動物らしく、閑閑とした世界で暮らしているかのようなのだ。


ところで、榎俊幸はブログに 「世界一モテる女」 というエントリがある。その中で 「私が選ぶ絵に描かれた魅力的(モテる)女性像ベスト3」 というものを挙げているので、その部分を引用してみよう。

● 第3位は、ジョン・エヴァレット・ミレー(ミレイ) 「花嫁の付き添い」 。
主役の花嫁では無く、その付き添いの娘を描いている。 花嫁の妹か侍女? なのかも知れない。
この作品は 「オフィーリア」 に比べると、それほど有名ではないのだが熱烈なファンが多い。
● 第2位は、アメデオ・モディリアーニ 「おさげ髪の少女」 。
モディリアーニの画風は癖が強いが、描かれている少女はナイーブ(無垢)そのものと言っていい。
● 第1位は、ヨハネス・フェルメール 「青いターバンの少女 (真珠の耳飾の少女)」
やっぱりそうだろうと思った? これが世界中で最も人気が高いのだよ。 でも、この人には眉毛が無いし、髪の毛も見えないし、ファッションも変だし・・・ トータル変だ!
顔の作りを見ても、これといった 特徴は無いし、漠然とした女性(少女)像でしか無いのである。
だけど魅力的な何かを醸し出しているのだから不思議と言わざるをえない。
あえて言うとするならば、それは “エッセンス” なのだと思う。
人それぞれの固有的特徴を引き算して、誰にでも共通し得る “一瞬の美”の表情を捉えているのだ。

こういったベストについて考えたこともなかったので面白く読んだ。「私が選ぶ」 とあるので、多少主観が入っていると思われるこのベスト3を頭に入れて榎俊幸の描く女性や少女を見ると、新たな発見があるかもしれない。

ということで、『THE WHITE』、『越冬』、『AQUARIUM4』 の三点をポスト。
枯葉の中に半ば埋もれて横たわっている体を縛られた少女 (?) を描いた 『THE WHITE』 は、タイトルと少女が手にした林檎から白雪姫がモチーフであることが分かる。
二枚目の 『越冬』 を見ているとクリムトのことが頭に浮かんでくるので、勝手にクリムトへのオマージュを捧げた作品だと解釈しているのだが、実際にはどうなのだろう。
『AQUARIUM4』 は、所謂エロタコものである。所謂といってもボクが勝手にカテゴリーを作っているだけなのだが。葛飾北斎の 『喜能会之故真通 (きのえのこまつ)』 の中の一作 「蛸と海女」 辺りが始まりだと思われる蛸と女体をモチーフにしたエロタコものも、いずれまとめてみたいと思いながらも放置している。
本当はもう一点、非常に好きな作品があって、その作品もポストする予定でいたのだが、それは別の機会にまわすことにした。

Education:
1986 東京藝術大学卒業・デザイン賞
1988 東京藝術大学大学院修了
1989 東京藝術大学研究生修了

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