Friday, March 07, 2008

Aubrey Beardsley 02


Aubrey Beardsley - Design for St Paul's, 1894

「・・・・・・一八九四年の初め頃、当時 『グラフィック』 と 『 イラストレイテッド・ロンドン・ニュース』 で占領されていた市場に割り込もうという目的を持って創刊された雑誌、『セント・ポールズ』 の挿絵を描くという、またもうひとつの新しい仕事を引き受けた。手初めに彼は、その雑誌の各欄――音楽、美術、書評、ファッション、劇――の見出し用の挿 絵を考案する、といったいくつかのお定まりの仕事をした。雑誌の発行人には、その挿絵はどれも――中のある一枚をもっとよく見るまでは――別に刺激的なも のには思われなかった。その一枚に、『セント・ポールズ』 の読者を憤激させるか、あるいは快く刺戟するかするために、ビアズリーは、鼻や骨董品を入れる、当時流行したガラスの半球形の置物を載せたテーブルの前に 座っている女を描いた。その置物の中には、グロテスクなことに、胎児が入っていたのである。これらの挿絵が発表されたとき、この奇怪で刺激的な置物は削除された。」 スタンリー・ワイントラウブ (Stanley Weintraub) 著 『ビアズリー伝 "Aubrey Beardsley: Imp of the Perverse"』 (中公文庫) より




Aubrey Beardsley (オーブリー・ビアズリー)
1872年8月21日イングランド南部のブライトンで生まれ、1898年3月16日結核のためフランス南東部のコート・ダジュールにある町マントンにて死去。

1枚目の "Design for St Paul's" は、上述の引用にもある様に、『セント・ポールズ』 誌のために描かれた挿絵の中では最も刺激の強い作品で、1894年に制作された。
ビアズリーには、同性愛の傾向があるのではないかとか、姉のメイベルとの関係でインセストの禁忌を犯しているのではないかといった噂があった。河村錠一郎の 『ビアズリーと世紀末』 によると、1966年のビアズリー大回顧展の翌年に出版されたブライアン・リードの 『オーブリー・ビアズリー』 に 「確かに彼女には illegitimate birth があったことが判明している」 という記述があり、これには 「この情報のソースは明かすことができない」 という註が付されていたという。河村錠一郎はビアズリーの作品に表れるオブセッションをいくつか挙げている。即ちファロス、アンドロギュノス、胎児がそれだ。河村錠一郎がここで注目しているのは胎児と、胎児がある時期に集中して描かれていること。そこからひとつの想像を巡らせている。1893年から1894年にかけて発表されることになる 『名言集』 にを中心に、1892年から1893年にかけての2年間の作品に胎児が頻繁に登場。姉メイベルの illegitimate birth は、1892年に起こった出来事であり、胎児が最初に描かれたのは同年の12月に制作されたルキアノスの 『本当の話』 用に描かれた挿絵である。そこで、

ビアズリーはメイベルの堕胎あるいは流産にたちあっているのであろうか。胎児の父親はオーブリーなのであろうか。

と推理を巡らしている。この推理は、『ビアズリーと世紀末』 に収録された 「ビアズリーと性のアンビヴァレンツ」 の内容の一部なのだが、このテキストの初出は1978年と、既に30年以上の月日が経過した。この間に情報の開示や新たな事実の発見などがなされている可能性がある。ウェブ上で検索すれば案外簡単に答が見付かる可能性もあるが、面倒だし (またかよ!)、特に答を知りたいというほどでもないので、この疑問についてはこのまま放っておくことにしたい。
遅れてきた象徴主義者Gustav-Adolf Mossa (Gustave Adolphe Mossa、ギュスターヴ・アドルフ・モッサ) の描いた1905年の "Le faetus" という作品に円筒状のガラスケースの中に浮かぶ胎児が描かれており、ビアズリーのこの作品からの影響が窺える。
2枚目の 「アクロポリスを守るリューシストラテー "Lysistrata Defending the Acropolis"」 と3枚目の 「陰部を隠すリューシストラテー "Lysistrata shielding her Coynte"」 は、アリストパネス (Αριστοφάνης、Aristophanes、アリストファネス) の 『女の平和 "Λυσιστράτη』 (リューシストラテー、Lysistrata) の挿絵として1896年に制作されたもの。
4枚目の 「ストマック・ダンス "The Stomach Dance"」 は、言うまでもなくオスカー・ワイルド (Oscar Wilde) の戯曲 『サロメ "Salomé"』 のために1894年に制作された挿絵。

文章の追加。(07.01,08)、(03.01,09)


《関連エントリ》
traveling with the ghost: Aubrey Beardsley 01


Wikipedia
Ciudad de la pintura - La mayor pinacoteca virtual
History of Art: Aubrey Beardsley

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