Monday, May 11, 2009

Hans Bellmer 04






Hans Bellmer (ハンス・ベルメール)

ハンス・ベルメールが人形を制作する上で、E.T.A.ホフマン(E.T.A.Hoffmann)の短編小説「砂男」、「顧問官クレスペル」、「大晦日の夜の冒険」を下敷きにしたジャック・オッフェンバック(Jacques Offenbach)のオペラ『ホフマン物語 "Les Contes d'Hoffmann"』に登場する自動人形オリンピア(Olimpia)がイメージの源泉になったことはご存知の通りである。

不幸にして、ボクは『ホフマン物語』をオペラでも映画でも鑑賞したことがない。昔古本屋で見つけた水野英子が漫画化した『ホフマン物語』は読んだ記憶はあるが、もう内容を覚えていない。しかし、ホフマンの短編「砂男 "Der Sandmann"」は、岩波文庫の『ホフマン短篇集』で高校時代に何度も読み返した、かなりお気に入りの短編小説だった。90年代の半ばに河出が、「砂男 "Der Sandmann"」とジクムント・フロイト(Sigmund Freud)の「不気味なもの "Das Unheimliche"」を抱き合わせた文庫を種村季弘訳で出していた。あれはあれですごくいいコンセプトの文庫だったが、今も手に入るのだろうか?
ポストした作品の1枚目を見たときにまず思い出したのが、岩波の短篇集で使われていた「砂男」のオリンピアの挿画だった。といっても、このエントリをまとめるまで両者を見比べるなんてことはしていなかったのだけど。

で、今本棚から漁り出した文庫を久しぶりに見ているのだが、驚いたことに件の挿画を描いたアーティストは、あのアルフレート・クービン(Alfred Kubin)だったのである。ウェブ上にこの挿画が転がっていないか検索してみたが、残念ながら見つけることができなかった。
ベルメールがインスピレーションを得たのはオッフェンバックのオペラに登場したオリンピアであるということは、動かしがたい事実ではあるのだろう。しかし、クービンの挿画の使われたニンフェンブルガー版の短編集をベルメールが読んでいた可能性があるのではないか、その遠い記憶がこうして姿を現したのではないか、という可能性の低い妄想に耽ってみた。両者を見比べて、全然似てないじゃん、という方がほとんどではないかと思うが、ボクには似て見えるのでご了承頂きたい。

2枚目にポストした作品に写っている二人の人物は、ハンス・ベルメールその人と、1947年から1950年頃までお付き合いをしていた女性、ノラ・ミトラニ(Nora Mitrani)。このふたりの関係については、いもじな日々というサイトに詳しい解説があったので引用しておこう。

ノラ・ミトラニは 1961年にパリで自殺したらしい。彼女とベルメールは1946年の夏にパリで出会い、1947年から48年にかけてトゥールーズで同棲したが、1950年に別れた。おそらくこの間、ベルメールは彼女から決定的な影響を受けている。たしかベルメールにアナグラムを教えたのも彼女だったと記憶している。私の考えでは、ベルメールの『イマージュの解剖学』を研究する上で、彼女の影響に関する考察は欠かせない。(と思いつつ全然手が着いていないのだが)。
 1947年にトゥールーズで撮影されたベルメールとノラの写真を見ると、ノラの背丈はベルメールとほぼ同程度であり、また比較的がっしりした体躯をしている。また、ノラと別れた後、1951年にベルメールが制作したリトグラフ「脱衣(deshabillage)」では、ノラの「外皮」を脱ごうとしているベルメール自身が描かれている。裏を返せば、少なくとも或る時期、ベルメールはノラに同化する欲望を抱くほど惹き付けられたということなのだろう。そして、彼らの別離は、ノラの余りに強力な影響からベルメールが逃れようとしたことによるものと思われる。(いもじな日々 より)

ベルメールと付き合った女性はことごとく不幸になるなあ。

ベルメールのエントリは後十数回ポストできるだけのストックがあるので、のんびりポストしていきたい。


《関連エントリ》
traveling with the ghost: Hans Bellmer
traveling with the ghost: Hans Bellmer 02
traveling with the ghost: Hans Bellmer 03
traveling with the ghost: Alfred Kubin

Hans Bellmer in der Galerie Berinson, Berlin - artnet Magazin

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