Thursday, January 15, 2009

Martin Parr - The Last Resort -





Martin Parr (マーティン・パー)
イギリスのドキュメンタリーフォトグラファー。

マーティン・パーがこれまでまとめた写真集の中で最も有名なものは、1986年に出版された "The Last Resort" だろう。
1983年から1985年にかけ、リバプール郊外の浜辺で、週末ともなれば多くの人で賑わうニューブライトンという労働者階級のリゾート地を舞台にそこに集う人々を撮影したというのがその内容についての簡単な説明になる。こう書くとなんら特徴のない写真集であるのだが、これが出版されると大きな論争を巻き起こすことになった。
イギリスのドキュメンタリフォトグラファは伝統的にワーキングクラスを賛美する写真を撮る傾向が強かったのだが、マーティン・パーは、その様な視点には立たず、ありのままの状態を時にシニカルにときにユーモラスに切り撮ってみせた。

例えば、赤いベンチに座った親子連れがフライドポテトを食べている。そのすぐ傍にはゴミ箱から溢れかえったゴミが散乱している場面を捉えた写真。
マーティン・パーは、前のエントリで紹介した 『写真のエッセンス』 収録のインタビューの中で上述の写真について、

その写真を撮るとき、あなたは何を考えていたのですか?

と質問され、次のように答えている。

私が考えていたのは、「外出をしている家族がいて、銀行が閉まっている週末だからゴミ箱があふれているな」 ということですね。ニューブライトンの素晴らしいところは、家族内の活動が、ごく普通に起きているということで、リバプールの人はとてもフレンドリーで、家族と楽しく過ごしていますが、背景にはゴミや汚物があります。ある意味でそれが、作品の政治的な考えの一部なんです。

さすがイギリス人。シニカルな答え方をしている。

"The Last Resort" が撮影された当時はというと、鉄の女と呼ばれたあのマーガレット・サッチャーが首相を務め、小さな政府を掲げた経済政策の一環として、インフレ抑制のため銀行が金利を引き上げた結果、失業率が上昇し失業者が町に溢れかえった、そんな時代である。閉塞感に包まれ鬱憤がたまっていた当時の労働者達の慰安の場所のひとつが、この写真集の撮影された舞台のニューブライトンだったのだ。
こういったことが時代背景にあり、批評家などからはマーティン・パーのシニカルな視点を非難する声も上がったという。
批評に関しても、先程の 『写真のエッセンス』 のインタビュで質問を受けている。

『The Last Resort』 に対して受けた批評は、どの程度あなたに影響を与えましたか?

と問われ、

私は批評に対していつも興味がありません。自分のやっていることが明確にわかっていますし、自分の作品が議論を引きおこすことも理解していますが、若いころから批評は何の害もないことがわかっていました。私は、もしこれを自分が撮らなかったら、誰も撮らないだろうというような気持ちを持っています。ある程度まで、現代社会の問題を批判しているのであり、その中の人々を非難しているわけではありません。私が批判しているのは、保守主義、大量消費、観光産業であり、それらは皆、私たちが生活をしている西欧社会の一部であり、私にとってはそれを撮影しないことの方がおかしいのです。

と答えている。

まあ、そんな批評、主義主張は色々あるのだけど、ボクとしては、エミリー・ディキンソンについて、「まだお元気とは」と驚いて見せたことで、その周囲や我々をまさか!?と驚かせたとある批評家 (なのかな?田中純関係からヲチスレ覘き始めたんで、結構前から名前は知っているんだけど、その割に書いたもの未だにをまともに読んだことないから、詳しいことは知らない、個人的には、定期的に笑いのネタを提供してくれる人って感じの人で、おおっと、マーティン・パーの皮肉に煽られて、ブログ上ではなるべく表に出さないようにしている (つもりの) 皮肉屋の面が出てしまった、ってなことなどは書かなきゃいいんだろうが、ディキンソン問題については、どこかで皮肉のひとつも言いたかったので、いつの話題よ?ということに対して、今更ではあるが、ここで遠吠えしておく。) 的に言えば、ウィリアム・エグルストンへのアメリカからの回答 (by 仲俣暁生 って、結局名前出すのかよ!) とでもいう様な、マーティン・パーの写真の色彩や構図が好きなのだ。

Tate Collection | The Last Resort 23 by Martin Parr のRachel Taylor の書いた text を参考にさせてもらった。


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