Wednesday, November 05, 2008

Margaret Keane


Margaret Keane (マーガレット・キーン)
1927年テネシー (Tennessee) 生まれのアーティスト。
50年以上前から Big Eyes と呼ばれる大きな目が印象的な女性や子供の絵を中心に描き続けていて、現在活躍している多くのアーティストに大きな影響を与えた。
Big Eyes の他にも Sad Eyes と呼ぶ場合や、doe-eyed という形容詞を付けて Margaret Keane の作品について語られることが多い。

なぜ Sad Eyes と呼ばれるのかと言うと、もちろん描かれた人物が悲しく憂うような目をしているからなのだが、これには次のような話がある。

1960年代、マーガレット・キーンの二番目の夫ウォルターは、マーガレット・キーンが描いた作品を自分名義で販売していたという。結婚生活は幸せとは言えず、ふたりは離婚することとなったが、離婚を巡る裁判で作品は誰のものかということが争点となる。マーガレット・キーンは自ら絵を描いてみせたが、ウォルターは肩の痛みを理由にそれを拒否した。その結果、1965年に作品はマーガレット・キーンのものであることが認められたという。
だから、マーガレット・キーンの初期の作品に描かれた人物の大きな眼が悲しく沈んでいることについて、その不幸な結婚生活を反映しているからだと語られている。
暗く悲しげだったマーガレットの作品は、離婚後にハワイへ移住した頃から明るいものへと変化していった。
マーガレット・キーンは現在、SF のベイエリアに位置するナパ郡 (Napa County) で創作活動をしている。
尚、マーガレット・キーンの半生を描いた映画 "Big Eyes" がインディーズ系の作品として制作されることになり、マーガレット・キーンをケイト・ ハドソンが演じる予定だと今年の2月頃に発表があったらしいのだが、制作は進んでいるのだろうか?


著名人の中にはマーガレット・キーンのファンが結構いるらしく、例えば、ティムバートン (Tim Burton) は妻の肖像画をマーガレットに依頼して描いてもらっているし、マーガレット・キーンの作品のコレクターの中には、マリリン・マンソン (Marilyn Manson) やマシュー・スイート (Matthew Sweet) の名前があったりして、いずれもさもありなんと納得できる顔ぶれだ。
他にもジョーン・クロフォード (Joan Crawford) やナタリーウッド (Natalie Wood) といったハリウッドの大女優がマーガレット・キーンの作品のファンだったというが、こちらはすごく意外だった。


マーガレット・キーンが今現在活躍しているアーティストに与えた影響で一番顕著なのはやはり Big Eyes、Sad Eyes と呼ばれたり、doe-eyed という形容詞で言い表されるあの大きな目だろう。
直接的な影響、間接的な影響を挙げていくと、マーク・ライデン (Mark Ryden)、マリオン・ペック (Marion Peck)、キャシー・オリヴァス (Kathie Olivas)、ケリー・ヘイグ (Kelly Haigh)、アナ・バガヤン (Ana Bagayan)、ベサニー・マーチマン (Bethany Marchman)、Lori Earley、Dave Burke、Dani Tull、Lisa Petrucci ・・・・・・とリストはいつまでも続く。

マーク・ライデンやマリオン・ペックなどの作品に出会ったとき、アメリカにも日本のマンガやアニメのように目の大きなキャラクターを描いている人たちがいて市民権を得ていることを意外に思った記憶がある。もちろん日本のマンガやアニメが海外でも読まれたり見られたりしていることを知らないではなかった。一部で熱狂的に指示している人がいることも知ってもいた。また、アメリカにも眼を大きくデフォルメしたマンガやアニメ、そしてイラストがあることも知っていたが、そういったデフォルメはマーク・ライデンやマリオン・ペックの作品に描かれる人物たちへと繋がる様には思えなかった。だから、まだまだ日本のマンガやアニメの様に大きく描かれた目は奇形的で不自然なデフォルメとして気味が悪いと感じている層が多いのではないだろうかとどこかで思っていたのだ。
ブログを始めて、ただ作品を DL するだけではなく、アーティストの情報も調べるようになると、マーク・ライデンやマリオン・ペックが大体どの世代なのかということが分かってきた。そうすると今度は、日本のオタクカルチャからの影響をもろに受けた世代とは思えないのに何故こんなに大きな目をしたキャラクターを描く様になったんだろう?という疑問が湧いてくる。このどうでもいいといえばホントどうでもいい疑問はずっと頭の片隅で燻り続けていたのだけど、ある時マーガレット・キーンと出合い、そこでようやくこの疑問への回答と思われるものへと辿り着いたと感じた時は嬉しかった。

でも今度は、マーガレット・キーンが大きな目をしたポートレートを描き始めたのは何からの影響なんだろう?という更なる疑問が。しかし、これ以上起源を遡るのも面倒なので、この疑問はとりあえずなかったことにしておきたい。だけど、ひとつ思い浮かぶことがなくもないので書き加えておこう。

1930年代にクリクリと動く大きな瞳とキュートな歌声、そしてセクシーな腰つきのダンスとウォーキングで人気者となったベティ・ブープ (Betty Boop)。マックス・フライシャーが制作し、パラマウント映画が配給を務めた、このベティ・ブープという架空の少女を主人公とした短編アニメーションは、ベティ・ブープのコケティッシュな魅力とセックスアピールで、当時アメリカだけでなく世界的に大変な人気があった。

「アニメーションでありながらベティ・ブープは一時期、映画史に燦びやかな光芒を放った。新しいタイプの女性像、いや、むしろ女優像として人気を博し、理想的モダン・ガールとして「キネマ旬報」における人気女優海外の部でベスト・テンにも入った。彼女の歩んだ道もまた、アニメーションでありながら不思議にも美人女優としての典型的な盛衰をたどったのだ。だからこそ美人女優として今でも名を残しているのかもしれない。アニメーションの世界においても美人女優は忘れられていく存在でなければならなかったのかもしれない。それこそか彼女がミッキイ・マウスやポパイと異なるところであり、そこにこそベティ・ブープの真骨頂があったのかもしれない。彼女は突如消えたのだった。消されたともいえるし消えるべくして消えて行ったともいえる。実在の女優の如き、引退後の噂など聞かないし、老残の身を盗み撮られたこともない。さすがアニメ女優。引退すら理想的だった。」

日本でももちろん人気があり、後に筒井康隆 (がベティ・ブープの作品に触れたのは年齢的に戦後になってからなのかもしれない) は 『ベティ・ブープ伝 -女優としての象徴 象徴としての女優-』 という伝記まで書いしまった。上の引用文はその伝記の冒頭部分になる。


そういう訳で、アメリカにおける Big Eyes の流れはベティ・ブープ (Betty Boop) の誕生まで遡ることが出来るのかもしれない。ディズニーは?という声が聞こえてこなくもないが、動物の擬人化系はとりあえず埒外ということにしておく。
アメリカ国内には他にも大きな目の人物画やキャラクターを描いていたイラストレーターやカトゥーニストがいるので、誰か時系列でまとめてくれないものだろうか。マーガレット・キーンの登場以前の部分やマーガレット・キーンの Big Eyes ブームと80年代の後半に登場したにマーク・ライデンの間の空白部を時系列的埋めてくれる勇者の登場を強く切望。
穴だらけのすごく中途半端なものになってしまったけど、以上でアメリカにおける Big Eyes の起源への遡行という胡散臭い試みは終了。

今現在のことについても少し。アメリカにおいてマーガレット・キーンの作品の認知度がどれくらいでどう支持されているのかまったく知らないので、結局想像ということになってしまうのだけど、Big Eyes のキャラクターを描いている若手のアーティストは、マーガレット・キーンからの影響を直接受けたというよりも、影響を受けたアーティストの作品から影響を受けたという場合がほとんどなのではないだろうか。マーガレット・キーンの作品が今でも支持されているとしたら、それはマーク・ライデンなどの登場を受け、そのフィルターを通してのものなのではないかと思う。
また、大きな眼を描くということについて前の世代と大きく違ってくるのは、日本のマンガやアニメといったものからの影響が登場してくることだろう。しかしこれはまた別のお話。
とにかく、世代が新しくなればなるほど、Big Eyes の起源はぼやけて遡りづらいものになっていくのではないかと思う。

最後に絵の世界から離れ、以前ポストしたファッションフォトについて触れておこう。Steven Meisel (スティーブン・マイゼル) が撮影した Jessica Stam (ジェシカ・スタム) のファッションフォトを前にポストしたことがあった (こちら)。その時にはまったく思い付きもしなかったのだけど、今思えばあのジェシカ・スタムの眼が大きく加工されていたのは、マーガレット・キーンへのオマージュだったのかもしれない。Thomas Paquet (トーマス・パケ、トマス・パケ) も同様の作品を制作しているが (こちら)、これはスティーブン・マイゼルに影響されたものだろう。

Margaret Keane Official Collectors Keane Margaret Gallery
Wikipedia
Keane Eyes Gallery
Margaret Keane and Keanabilia and Keanabilia and Keanabilia
Margaret Keane Paintings Art Images Gallery
BIG EYED ART BONANZA by MASTERS: KEANE, GIG, LEE, EVE *
margaret KEANE

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