Wednesday, November 05, 2008

Trevor Brown 01





Trevor Brown (トレヴァー・ブラウン)
1959年にロンドンで生まれ、現在は東京を拠点に活動をしているアーティスト。
Wikipedia 的に書くと、性欲倒錯――例えばペドフィリア (小児愛) やBDSMといったフェティッシュなテーマ――の分野を切り開く作品を制作している日本在住のイギリスはロンドン出身のアーティストということになる。
アートスクールを卒業後デザインスタジオに入社して広告業界で活動していが、途中でフリーのイラストレーターとして活動を始める。が、どうも当時ロンドンは退屈で燃えていたらしい。

1985年におよそ100部の死体解剖図や猥褻な死体を描いた小冊子を出版。
創作活動をする上で影響を受けたのは、J.Gバラード (J.G Ballard) の小説 『クラッシュ "Crash"』 やフランスのアート集団 Bazooka (Bazooka Productions) の作品だったという。確かにトレヴァー・ブラウンの作品の中には、これらからの影響を窺わせるものがある。

1991年頃から日本のアートや文化に対する関心が強くなっていく。日本のアートや文化といっても、浮世絵や伝統文化といったものにではなく、もっと現代的でアンダーグラウンドなアートや文化への関心である。特に今では (その頃既にではあるのだけど) 世界的なノイズ・ミュージシャンとして有名な秋田昌美 (Akita Masami) aka メルツバウ (Merzbow) の活動への関心は並々ならないものがあった。その頃の秋田昌美は、ノイズ・ミュージシャンとしての活動意外にも、緊縛美研究会の緊美研に所属してSMライター、ディレクター、写真家としても精力的にに活動していた頃である。秋田昌美のエロティシズムやフェティシズムに関する文章は80年代の終わり頃から書籍として纏められていて、特に青弓社からは多くの著書が出版されている。
『倒錯のアナグラム―周縁的ポルノグラフィーの劇場』 を皮切りに、『フェティッシュ・ファッション―変貌するエロスと快楽身体』、『快楽身体の未来形―TERMINAL BODY PLAY』、『性の猟奇モダン―日本変態研究往来』、『アナル・バロック』、『ヴィンテージ・エロチカ』 という著書が青弓社から出版され、ボクも大体持っている (と書いて本棚を調べてみたら、『倒錯のアナグラム―周縁的ポルノグラフィーの劇場』 だけが見当たらない。どこにいったんだ?)。
ノイズ関係の著書も同じ青弓社から 『ノイズ・ウォー―ノイズ・ミュージックとその展開』 というタイトルで出版されていて、この著書の中にはトレヴァー・ブラウンが影響を受けたフランスのアート集団バズーカに触れた箇所がある。ボクはトレヴァー・ブラウン自身が書いたプロフィールを読むまで、トレヴァー・ブラウンとノイズとの関わりをすっかり失念していたので、ああ、そういえばそうだったと少しだけ記憶の扉が開かれた。

メディカルアートの第一人者として有名なロメイン・スロコンブ (Romain Slocombe) やイギリスのノイズ・グループ Whitehouse を率いるウィリアム・ベネット (William Bennett) との交友が始まったのもこの頃のこと。ロメイン・スロコンブは昔っから日本へは何度も来ていて、東京滞在記 (というか、ルポルタージュ?) をウェブで公開しているので探せば見付かるだろう。ウェブ上で見付かる作品は以前苦労して探し出したことがあるので、そのうちにポストする予定。

1993年、トレヴァー・ブラウンはエアブラシを使用した作品の制作を始める。
最初の展示会はフェテッィシュ・クラブ・パーティとして有名なあのトーチャー・ガーデン (TORTURE GARDEN) でのこと。
こうしたイベントが開催されるとはいえ、イギリスの性文化への抑圧は根強くあり、失望したトレヴァー・ブラウンは、その頃ロンドンに滞在していた、現在はテディベアアーティストとして人気の高い泉木の実 (Konomi Izumi) aka hippie coco と共に東京へ移住し、1994年から日本で精力的に活動を開始する。
こうして書店でトレヴァー・ブラウンの作品を目にする機会が90年代の中頃から増えていった。そういったこともあって、トレヴァー・ブラウンの作品は、ボクにとって90年代の記憶と分かちがたく結びついているんだけど、どういう訳だかその記憶を抑圧するものがあって、トレヴァー・ブラウンの作品をこれまで避けてきた。理由は分からない。で、久しぶりにトレヴァー・ブラウンの作品をまとめて見たことで、その抑圧も解消された感じがする。なんか快適。

海外から日本へ戻ってきて感じるのは、綿菓子のように甘ったるい若者文化への嫌悪である、みたいなことを昔どこかに四方田犬彦が書いていたような気がするが (嫌悪とまでは言っていなかったかも)、トレヴァー・ブラウンはその綿菓子のように甘ったるさをジュクジュクと腐らせ、"baby art" といったカタチで表現する。一見可愛くエロティックでセクシーな女の子たちの絵の底にはシニカルな悪意が見え隠れしているのだけど、トレヴァー・ブラウンから影響を受けたアーティストたちの作品からはそのシニカルな悪意がスッポリ抜け落ちていることが多いのではないだろうか。

baby art
Wikipedia

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